目の前にあるこの四合院が、蔡廷蘭進士第です。蔡廷蘭は澎湖で初めて科挙に合格した人物で、本名を蔡崇文といい、廷蘭は別号で、学者たちからは秋園先生と呼ばれました。彼は1845年に科挙に合格しましたが、澎湖で初の合格者であるとともに、唯一の合格者となりました。蔡廷蘭は澎湖に学風をもたらし、台南の崇文、引心、そして澎湖文石などの書院で長年講義するなど、澎湖の教育の発展に大きな足跡を残しました。蔡廷蘭の著名な文学作品としては、1835年に台風でベトナムに流された時、海上での漂流経験とベトナムの風情を書き残した《海南雑著》が有名で、ロシア語、フランス語、日本語、ベトナム語でそれぞれ出版されています。
この進士第は、蔡廷蘭が合格した翌年に帰郷し、祖先を祀った旧居の傍らに建てられた建物です。建築物の敷地面積はおよそ51坪で、形状は正方形に近く、四方が書斎で、真ん中に中庭がある澎湖伝統の民家です。正面中央の門楣のまぐさ石には玄武岩で作られた扁額が配され、そこには「進士第」の三文字が彫られています。特に片屋(かたや)の屋根は澎湖の民家では数少ない閩南式の燕尾脊の作り方を取り入れており、役人の家の特色がみられます。
進士第の東側にある古い家屋は、蔡廷蘭の生まれた場所で、門楣(もんび)には「瓊琚園林」の字が見えます。これは蔡家が金門の瓊林から移り住んできたことを示すものです。家屋内部の正庁には、澎湖庁の歴代役人が聯盟で贈った「郷国善士」の扁額が掲げられており、これは澎湖の災害救助に対する貢献を讃えるものです。
アクセス情報
23°33'2.34000"N 119°36'41.58000"E